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2012年2月14日 (火)

うかうかしていると

  ヨーロッパ宇宙期間(ESA)が開発を進めていた新型小型ロケット「アリアン・ヴェガ」が13日,南米ギアナ宇宙センターから打ち上げられた.打ち上げは無事に成功,イタリアなどの小型衛星9機の分離にも成功した.

  日本も同様の小型ロケット「イプシロン」を開発中だが,「アリアン・ヴェガ」に先を越された.まぁもともと別に競っていたわけではないかもしれないが,「イプシロン」が完成すると,小型衛星打ち上げ市場においては間違いなく「アリアン・ヴェガ」はライバルになるはずだ.衛星打ち上げを依頼する側からすれば,費用が同じならば,実績がある方を選びたいはずで,そういう意味では,これで「アリアン・ヴェガ」の方が断然有利になったとも言える.

  ちなみに2000年の今日(2月14日),NASAの小惑星探査機「NEAR(Near Earth Asteroid Rendezvous)」(ミッション終了後「NEAR シューメーカー」と改名)が小惑星「エロス」を周回する軌道に入り,小惑星の軌道に到着した「世界初の」探査機となった.「NEAR」は,「エロス」を周回しながら詳しい観測を行い,翌2001年2月12日,「エロス」への軟着陸に挑み見事成功,「世界で初めて」小惑星に軟着陸した探査機となった.
  世界で初めて月以外の天体表面からサンプルを持ち帰った探査機は「はやぶさ」である.が,NASAの公式な見解(?)では,世界で初めて小惑星に到達したのはこの「NEAR」であり,世界で初めて月以外の天体からサンプルを持ち帰ったのは「スターダスト」(ヴィルト第2彗星のコマから試料を採取)なのだそうな.で,「はやぶさ」は,「世界で2番め」に小惑星の表面に到達した探査機であり,「世界で2番め」に月以外の天体のサンプルを持ち帰った探査機なのだそうな.

  「NEAR」はもともと小惑星に着陸する構造はもっておらず,軟着陸したとは言っても,それは「降りただけ」だし,「スターダスト」だって,彗星のコマの中を「通る」時にダストを採集したということであり,「計画の通り」小惑星に降り,「その表面から」サンプルを持ち帰ったのは「はやぶさ」が世界初なわけで,その一部をとって「2番め」と言われるのはやや心外ではある.
  なぜNASAが前述のような見解を採るかと言えば,彼らは「一番である」からこそ,他に対して有利な立場に立てることを良く知っているのだと思う.伊達にソ連と国家の威信をかけた宇宙開発競争をやっていたわけじゃない.

  NASAの見解がどうあろうと,「はやぶさ」の偉業は「世界一」である.開発中の「イプシロン・ロケット」もいくつもの「世界初」を盛り込んだ画期的なロケットになるそうな.でも,うかうかしていると,誰かに先を越されてしまう.今,日本は東日本大震災からの復興で大変な時ではある.でも,「大変だから」と言って,世界から遅れをとってしまうと,その遅れを再び取り戻すのは実はもっと大変なことなのかもしれない.

  しかし,「大変」な中で力を発揮するのも日本人.是非頑張って欲しいものである・・・いや,(直接役に立てるわけじゃないが)私自身も頑張らなきゃいけないぞと.

 

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コメント

どうも。はじめまして。
ヴェガについては、これも結構延期しての今回の打ち上げなので、ESAも別に焦って作ったというわけではないように思います。

それに、同規模の民間利用可能なロケットならアメリカにもトーラスや、最近中断してますがまたリバイバル予定のアテナなんかもあるわけですし、固体ではないですがロシアのロコットも同規模のはず。

今回の話は、ESAが独自に(インドのPSLVやロコットに頼らずに)小型衛星を上げられるようになった、それ以上でも以下でもない話ではないかと感じています。

もちろん、イプシロンロケットの推進は重要で、個人的にもその成功と発展は願っているのですが、今回の話とはあまり関係がないように感じました。

はやぶさの件も、最初に「月以外の天体のサンプルを持ち帰った」のはやっぱりスターダストで正しいでしょう。「月以外の天体表面から」でははやぶさが世界初。それだけでも素晴らしい功績なのに、あえて彗星の尾のサンプルという偉業を成し遂げ、延長ミッションまで成功させたスターダストを貶めることはないように感じます。

日本の宇宙開発は、他国の成果を辱めなくても、X線天文学や太陽観測、小惑星探査など、十分世界の最先端に伍しているわけで、胸を張るべきだと思います。

投稿: LH2 | 2012年2月14日 (火) 21時13分

LH2さん,はじめまして.
いやいや,他国の成果を辱めようなんていう気は髪の毛の先ほどもありません.むしろ,彼らが自国の成果を「世界一」と誇り,「世界一」でありつづけようとする姿勢を讃えているつもりなのですが・・・
おっしゃるように,日本の宇宙開発のいくつかの分野では「世界一」と呼べるものがあります.しかし,遅れている部分もあるのも事実.現在「世界一」であることも,放っておいていつまでも「世界一」でありつづけられるわけではないので,現状に満足せず,「世界一」であることを誇り,常に「世界一」を目指してほしい(目指していたい)というのが,本文の意図なのですが,いかがでしょうか?

投稿: Y-Nakagawa | 2012年2月15日 (水) 11時21分

丁寧なお返事ありがとうございます。
意図するところ、よくわかりました。

文の中で、NEARやスターダストがちょっとかわいそうだったので書いたというだけの話です。
確かに、アメリカの宇宙開発、そして一歩先を狙っていく姿はかなり熱く、その熱さこそがアポロ、パイオニア、ボイジャー、カッシーニ、スターダスト、ディープインパクト、MER etcのさまざまな世界初の試みに挑戦し、成功を収めてきた原動力だと思います。

日本でも宇宙開発に携わっている人は、私を含め、作るなら世界初、世界一をと願っていますが、一般社会や政府はこういった分野での「出る杭」に冷ややかなのが残念に思います。

Y-Nakagawaさんにはこれからも一般の人々の宇宙への夢を掻き立て、宇宙を応援してくれる方を少しでも増やしていただけたらなあと思います。これからもがんばってください!

投稿: LH2 | 2012年2月15日 (水) 18時58分

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