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2011年9月26日 (月)

超光速

  ニュートリノが光より速く移動したという観測結果が発表された.
  これは,名古屋大や神戸大なども参加している国際研究チームによる実験の結果で,ヨーロッパ原子核研究機構(CERN)の加速器から発射したニュートリノを約730km離れたイタリアの研究所でとらえ,かかった時間を原子時計などを用いて正確に計測するというもの.3年間にわたり,1万5000回も実験を繰り返したが,その結果,ニュートリノが,同じ距離を光が伝わるよりも60ナノ秒(1億分の6秒)速く移動していたという結論に達したというもの.

  相対性理論によれば,質量を持つ物体は,光速を越えることができない.物体の速度が光速に近づくと,その物体の質量が無限大になり,無限大の質量を有限な力で加速することはできないからである(・・・たぶん).今回の実験結果が真実だとすると,これに矛盾してしまうことになる.
  また,光速に近づくと時間の進み方が遅くなり,光速に達すると時間が進まなくなる.光速を越える粒子があったとすれば,それはもしかしたら,時間軸を負の方向に,つまり,時間を遡っているのかもしれないという.

  これはエラいことだ.

  現代の物理学,天文学にとって,相対性理論は非常に重要な骨子である.その理論に破綻があるとすれば,その上にのっている多くの理論も再構築が必要になるかもしれないのだ.

  私のような素人でも思いつくことだけでも・・・

  例えば,この世の中に起こることは全て何かしらの原因があって結果があるはずである.ところが,「ある条件の元で,時間を遡ることが可能である」となれば,「原因より結果の方が先に起こってしまう」というようなことがありうるということである.

  現在,「宇宙の地平線」は約137億光年とされている.それは,宇宙で最も速い光で137億年かかる距離であり,それより向こう側の光は,宇宙誕生から現在までの137億年の間に「まだ届いていない」ということである.宇宙で最も速い光が届いていないということは,137億光年より向こう側は,我々とは因果関係を持つことはなく,したがって「ないのと同じ」ということになるわけだ.ところが,ニュートリノが光より速く運動するとなれば,137億光年先より向こう側も我々と因果関係を持つことになり,「ないのと同じ」というわけには行かなくなる.こうなると,「宇宙の地平線」もまた考え直さなければならなくなってしまう.

  結果を公表したグループも,未だこの結果については半信半疑のところがあるらしく,実験結果については「そう考えなくては説明がつかない」としつつも,反論や反証を求めているようだ.

  納得の行く反論もあった.

  大マゼラン銀河に現れた超新星SN1897A(これからやって来たニュートリノの観測により,小柴教授がノーベル賞を受賞した)では,ニュートリノが観測されたのは,光とほぼ同時であった.SN1987Aは,我々から16万8000光年離れた位置にある.730kmでは光よりも1億分の6秒早く届いただけだが,16万8000光年も彼方であれば,ニュートリノは光よりも1年以上早く届いていたはずなのだ.

  ニュートリノが光より速く運動しているというのは真実なのか,それとも,何らかの理由で「光より速く運動しているように見える」ということなのだろうか.光より早く運動するというのが本当ならば,それは普遍的なものなのか,それともある特定の条件でそうなるということなのか.「特定の条件」というのは一体何なのか・・・

  この実験結果に関する議論が,今後どのように進展してゆくのか楽しみではある.もしかしたら,根本的に解決するためには,数十年という時間と「アインシュタイン級」の天才が必要なのかもしれないが.

 

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