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2011年8月30日 (火)

ダイヤモンドの星

  いつぞやの観望会の折,こんな場面があった.

  その日の観望対象の一つはこと座のヴェガだった.この観望会にご夫婦で参加された方があった.
  奥様が望遠鏡を覗いて,
「うわー,きれい!ダイヤモンドみたい.こんなダイヤモンド欲しいわぁ,ねぇお父さん」
困った顔をする旦那さん.
なかなか微笑ましい光景であった.

  ヴェガを望遠鏡で見ると,白く明るい輝いていて,「ダイヤモンドみたいな星」なのだが,宇宙の中には「ダイヤモンドみたいな」ではなくて「ダイヤモンドの星」があり,しかも実はそれほど珍しいものではないのかもしれないらしい.

  2004年に我々から50光年離れたケンタウルス座の方向に発見された天体は,直径が約4000kmの白色矮星だったが,見積もられるその密度と組成,そして観測されるこの星の振動から,この星は内部の炭素が結晶して,全体がダイヤモンドになっているらしいとされた.なんと10^34カラットのダイヤモンドである.

  この「ダイヤモンドの星」はその大きさが月と同じくらいだったが,今度はそれよりもはるかに大きな「ダイヤモンド」が発見された.
  今回発見された天体の直径は推定約5万5000km.地球の5倍ほどもある.へび座の方向約4000光年に位置していて,「ミリ秒パルサー」と呼ばれる,高速で自転する天体の周囲を公転している.この天体の密度は水の約18倍であるとされ,これほどの密度であるならば,水素などの軽い元素ではなく,酸素や炭素のような重い元素でできているはずで,高圧の状態であるから,これがダイヤモンドのような結晶になっている可能性が高いという.
  この天体,もとは白色矮星であったものが,主星である「ミリ秒パルサー」の強力な引力で表層を剥ぎ取られてしまい,ダイヤモンドのような結晶になった中心核が残ったものではないかということだ.

  太陽程度の大きさの星は,その生涯の最後には,表層のガスを流出させて惑星状星雲となり,その中心には,「燃えカス」である酸素や炭素を主成分とする白色矮星が残る.この白色矮星は,高密度の天体で,しばらくの間は,恒星であった頃の余熱で光りつづける.ということは,この頃,白色矮星の中心部は高温・高圧の状態になっているわけで,地球上でもダイヤモンドが作られるような状況と似た状態になっているというわけだ.
  宇宙では,白色矮星など別に珍しい天体ではない.となれば,「巨大なダイヤモンド」というのも,実はありふれた存在なのかもしれない.

  「ね,大きなダイヤモンドなんて,別に珍しいものでもなんでもないんですよ,奥さん」

 

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