« ハレー彗星 | トップページ | 小惑星探査 »

2011年5月26日 (木)

去りゆくものと新しいもの

  今年3月に発生した東日本大震災.陸域観測衛星「だいち」は,その被害状況の確認に活躍したのを最後に,電源の電圧が低下,復旧運用の甲斐なく,最近運用停止となったばかりである.
  そして今度は,赤外線天文衛星「あかり」にも電力異常が発生してしまった.バッテリーの蓄電量が低下,太陽電池による発電ができる昼側にいる時にしか電力が供給されない状態になっているとのこと.現在,必要な対策が講じられている(「必要な対策」とは,太陽の光が当たる昼側にいる場合だけでも運用が可能になるようにすることもあるだろうし,もしかしたら,「あかり」自身がスペースデブリにならないように,軌道を変更して処分するということも含まれているのかもしれない).
  「あかり」は,2006年2月22日,鹿児島県内之浦宇宙空間観測所から,Μ-Ⅴロケット8号機によって打ち上げられた.要求寿命1年,目標寿命は3年であった.5年以上にわたって活躍していたのだから,そろそろ異常が起こっても仕方ないというところか.それでも,復旧できるものなら是非とも復旧して欲しいと願いたいところだが.
  さらに,こちらは日本のものではないが,2004年1月3日に,火星のガゼフ・クレーターに着陸して以来,活躍を続けてきたNASAの火星探査車「スピリット」も,静かのその生涯を終えることになったようだ.
  「スピリット」は,2003年6月10日,デルタロケットによって打ち上げられた.翌2004年1月3日に火星に着陸,当初は90日の予定で探査が始まったが,以来,何と6年以上にわたって活躍を続けた「長寿」の探査車であった.「スピリット」が送ってきた観測データは,我々人類に,火星に関しての様々な新しい知見を与えてくれた.中でも,送られてきた画像は,まるで火星旅行者が撮ったスナップ写真のように自然で,その画像を見ながら,私自身が火星の大地に立ったところを思い浮かべ,想像を膨らませたものだった.
  そうやって大活躍を続けた「スピリット」だったが,2009年5月13日,「トロイ」と呼ばれる緩い砂地を走行中,砂に車輪をとられ,身動きができなくなってしまった.地上局の管制官たちがこの砂地からの脱出を試みていたが,2010年1月26日,砂地からの脱出を諦め,以後は静止観測を行うことになった.しかし,動けなくなってしまうと,日当たりの良い場所に移動することができず,そうすると太陽電池による発電量が下がり,発電量が下がるとまた発電に有利な姿勢をとることが難しくなり,また,火星で度々発生する砂嵐から身を守ることも難しくなる.そうなるとまた太陽電池にチリが積もり,さらに発電量が下がる・・・という悪循環に陥り,昨年3月22日を最後に交信ができなくなっていた.そして遂に,「交信できる可能性は極めて少ない」と判断され,復活は断念された.
  非常に残念なことではあるが,90日の予定を6年以上頑張ったのだから仕方あるまい.地球に比べて変化の少ない火星の地上にあり,錆びる心配のないアルミ製の機体,動かなくなったとは言え,これから先も朽ちることなくそこに止まり続けることになるだろう.
  しかし,双子の探査車のもう一方,「オポチュニティ」はまだ健在だ.「オポチュニティ」には,もう少し,老体に鞭打って頑張ってほしいところだ.

  相手が人工衛星や探査車という機械であるとは言え,こうして舞台から去って行くというのはなんとも寂しいものではある.

  反対に,新しい計画もいくつか発表された.

  NASAは,小惑星1999RQ36という小惑星に接近,ロボットアームによって表面の試料を採取,その試料を格納したカプセルを地上で回収する「サンプル・リターン」を行う,いわば「アメリカ版はやぶさ」とも言える「オシリス・レックス(OSIRIS-REx : Origins-Spectral Interpretation-Resource Identifications-Security Regolith Explorer)を2016年に打ち上げると発表した.打ち上げられた「オシリス・レックス」は2020年に小惑星1999RQ36に接近,2023年に地球に帰還する予定とのことだ.
  日本の「はやぶさ2」は2014年打ち上げ予定,目的の小惑星1999JU3には2018年に到達,そこに1年半ほど止まり,詳しい観測と試料の採集をした後,2020年に帰還の予定だ.「はやぶさ2」と「オシリス・レックス」,目的も,手法も,計画の細部もだいぶ違うのかもしれないが,「小惑星探査」であることに違いはない.「はやぶさ2」にとっても,「オシリス・レックス」が良きライバルになってくれるのはありがたいことだと思う.互いに刺激しあって,両方とも,大きな成果をあげてくれることに期待したい.

  さらに,NASAは,スペースシャトル退役後の次世代有人宇宙船の開発を表明した.これは,中止となった「コンステレーション計画」で使われる予定だった「オライオン宇宙船」を元に開発される「多目的有人宇宙船(MPCV : Multi-Purpose Crew Vehicle)であり,火星など太陽系内各地へ到達するための計画の一環で,最初の有人宇宙飛行を2016年までに行う予定とのことだ.(どうでもいいことだが,世界中のペーパークラフト作家たちが「よし!いっちょ(型紙を)作ってやろう!」と張り切っているようだ)

  「去りゆくもの」があれば「新しいもの」もある.宇宙開発はまだまだ熱い,いや,これから先はもっと熱いようだ.火星に人類がたどり着き,「スピリット終焉の地」とかいう記念碑を建てる日は,意外と近い将来なのかもしれない.

 

この記事を読んで,「宇宙開発の話題はやっぱり熱いねぇ」と思った方,こちらをクリックして共感の投票をお願いします.→にほんブログ村 科学ブログ 天文学・宇宙科学・天体観測へ

|

« ハレー彗星 | トップページ | 小惑星探査 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 去りゆくものと新しいもの:

« ハレー彗星 | トップページ | 小惑星探査 »