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2008年4月10日 (木)

貴重なこと

  私の撮った天体写真を見て,「実際にこういう風に見えるんですか?」と聞かれた.
  月や惑星ならば,条件の良いとき,熟練した方なら写真よりもよく見えることもあるだろうが,星雲・星団や銀河ではそうは行かない.
  インターネットが普及した今日,天体写真も世の中にあふれている(私もあふれさせている“犯人”の一人であるわけだが).特に天文に興味のない人でもそういう天体写真を見る機会は多いわけだ.天体写真でしか見たことのない人が系外銀河を実際に望遠鏡で見た時,多くの場合は「もっとこう,渦巻きとかが見えるんだと思ってた」とがっかりすることが多い.そこに見えるものは,写真に撮られたような美しい渦巻きではなく,よく目を凝らさなければ見えているのかどうかすら分からないぼうっとした光芒にすぎない.
  そこで,天体の光を自分で捉えることがどんなに貴重なことか考えてみた(以下やや詭弁になっている点はご容赦いただきたい).
  例として,『アンドロメダ銀河』を口径20cmの望遠鏡で見た場合を考えてみる.光というのは,それが星であれ,豆電球であれ,マッチの火であれ,(何も細工をしなければ)全ての方向に同じように放たれる.つまり,光源からある距離では,光源からある瞬間に放たれた光はその距離を半径とした球殻状に広がっていることになる.『アンドロメダ銀河』までの距離は230万光年(私の『アンドロメダ銀河』のページでは250万光年としているがここでは一般的な230万光年という値を使うことにする).半径230万光年の球の表面積はだいたい 7 × 1047cm2.それに対し,口径20cmの望遠鏡が光を集める面積は約 3.14 × 102cm2.したがって,口径20cmの望遠鏡が『アンドロメダ銀河』内のある一点から放たれた光子を捉える確率はざっと見積もって1045分の1(千兆分の1の千兆分の1の千兆分の1)ということになる(まぁ数字はともかく,非常に貴重だということですよ).日常生活ではこんな低い確率のことは決して起こらないが,晴れた夜に『アンドロメダ銀河』に望遠鏡を向ければ確実に起こることなのだから不思議だ.
  それに対して,写真ではどうかというと,撮った本人にとってはやはり同じような確率で捉えた光子を記録したものだからやっぱり貴重なのだが,それを見る人にとってはただ目の前にあるものを見ているのに過ぎない.やはり是非とも夜空の下で,本物の星の光を捉える感動を多くの人に味わってもらいたいと思う.

...いやね,こうも天気の悪い夜が続くとこんなムダな計算もしてみたくなるわけですよ...

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