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2007年12月 9日 (日)

宇宙の果て

  土曜の25:00(つまり日曜の午前01:00)から「芸能界宇宙部」(チャンネルは忘れた)という番組が放送されているのをご存知だろうか.
  この番組,数人の芸能人が「宇宙」をテーマに研究発表をし,専門家がそれについてコメントするという,番組の企画としてはごく平凡と言ってもいいバラエティー番組なのだが...
  普通,このテの番組だと,その「研究発表」の内容がごくありふれていてちょっと天文をかじった人ならだれでも知っているものだったり,奇をてらった「エセ科学」だったりするのだが,この番組では最新の天文学にまで踏み込んでいて,ちきんと科学の裏打ちのある内容が扱われ,専門家がこれまた専門的見地からきちんと解説やツッコミをしてくれる.
  先週の第1回が「ブラックホールについて」,「宇宙人について」他.ブラックホールも安易にSF的な見方をせず,相対性理論まで踏み込んで議論がなされていたし,宇宙人もUFOや安直な宇宙人の怪しい画像などを持ち出すことをせず,太陽系外惑星探査の話や,生命が存在できる「ハビタブルゾーン」についての話題など,天文に詳しい人が見ても実に面白いと思う内容.この番組,是非ゴールデンタイムに放送して欲しいと思った.
  そして今回は第2回.今回もまた濃く深い内容の研究発表がなされていた.「タイムマシーンは実現可能なのか?」ではアインシュタインの相対性理論から,「運動の速度が大きければ大きいほど時間が進むのが遅いから,未来へ行くタイムマシーンは可能」という結論.つまり,未来へ行くタイムマシーンなら,可能な限り高速なロケットを作れば良いということで(それそのものは難しいのだろうが),別に特別はことをするわけではないから理論的には簡単.ただし(ここのところが安易なバラエティー番組と違うところ),光速を越えることはできないから過去へ行くタイムマシーンは不可能(もし光速を越えられれば時間軸の−の方向に運動することになるので過去に遡ることになる)と結論していた.
  そして一番印象に残ったのが「宇宙って何?」という内容.地球の大きさから始まり,太陽系や銀河系の姿.「天の川銀河」を含む局所銀河群(という言葉そのものは出てこなかったが),そして銀河団や超銀河団へ.さらにその先は?・・・「分からない」という研究発表だったが,そこは専門家がコメントをして,「知っているところまでが宇宙」という結論.
  一見,この結論はあまりに乱暴で,まやかしのような気がするだろうが,私自身,これと同じ様な話を5,6年前,当時国立天文台の台長だった海部先生の講演会で聞いた.その時は「宇宙の果ては認識の果て」という言い方だったが,つまりは「知っているところまでが宇宙」という言い方をしても本質的には違わない.もう少し科学的な匂いのする言葉を使えば「お互いに何の因果関係も及ぼさないものはお互いに存在しないのと同じ」ということなのだ.やや分かり易い例えを持ち出せば,北海道にいる蟻にとって,沖縄にいる蟻など存在しないのと同じ」ということだ.現在考えられている宇宙の年齢は137億歳.137億光年先からやってくる光は地球に届くまで137億年かかってしまうから,その先がもし存在していたとしても現在の我々にその光が届くことは決してありえない.宇宙で光より速いものは存在しないから,137億光年より遠いところからは何の情報も届かない,したがって,我々とは何の因果関係もないので「存在しない」と同じことになるのだ.
  ・・・というのは天文学上での話.もう少し我々の日常に沿って考えてみると・・・
  普通に生活していれば,夜空に見える星はもとより,月や太陽までの距離だって意識することはない.乱暴な言い方をすれば,空に見えるのは月や太陽や星だけでなく飛行機だって「空に見えている」だけで何の違いもない.つまり,距離を意識し,それを実感しない限り,その人にとっての宇宙の果ては地上せいぜい十数kmということになる.それが月までの距離を何らかの方法で実感することができれば(「月までの距離が大体35万〜40万km」とかいう数字を知っていてもそれが実感(というか頭の中でイメージ)できなければやっぱり同じ)宇宙の果てまでざっと40万kmに広がり,太陽までの距離を同様に実感できれば宇宙の果ては1億5000万km.さらに遠い天体までを実感できるようになればその人にとっての宇宙の果てはどんどんと広がっていくことになるのだ(そして究極には137億光年まで広がる訳だ).
  「お互いに因果関係を持たなければ存在しないのと同じ」という考え方,実は私が天文に関わっている原点だったりする.星を見続けるのも,天体写真を撮るのも,自作プラネタリウムを作るのも.「見たことがない」天体は私にとって「存在しない」ことと同じだから,たくさんの天体を見てみたい.見ただけではその天体が私にとってあまりに「存在がうすい」から,たくさんの天体を写真に撮り,その天体について調べ,その「存在感」を感じたい.自作プラネタリウム“PPLS-1では遂に8.5等星まで,約65,000個の星の穴を開けたから,その全てと私の間には小さいながらも因果関係があることになり,双眼鏡でなければ見えない星に至るまで,夜空に見えている全ての星は私にとって間違いなく存在している星ということになる.
  さらに,「認識の果ては宇宙の果て」だから,遠い天体を認識することで私にとっての宇宙の果てが広がることになるから,より遠い天体に憧れる.せっかくだから自分のこの「目」で遠い天体を捉えたい.それが無理ならせめて写真で.現在までで,眼視ではおとめ座銀河団のいくつかの銀河が最遠でその意味では宇宙の果てまで約6000万光年.写真ではしし座銀河団の2億7000万光年,ペルセウス座銀河団の2億3000万光年,コンパクト銀河群HCG56の4億光年(クエーサー 3C273 の20億光年なんてのもあるけど,これはやや特殊なのでここではちょっと除外)などで,こちらでは宇宙の果ては2〜4億光年といったところか.天文学上の宇宙の果ては137億光年,私にとっての宇宙の果てはせいぜい4億光年.私自身が生きている間に「私にとっての宇宙」をどこまで広げられるのか...可能な限り,挑戦を続けていきたいと思っている.

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実はまだ書きたいことがあるので今日の記事はもう一つ!・・・たぶん・・・

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